前回の冥想に関する投稿の続きです。
↓ 前回の続き ↓
ある土曜日の朝、マサチューセッツ州ケンブリッジの地元の瞑想センターまで妻を送り、車を駐めて待っていたときのことだ。
テニスの本を読みふけっていると、コツコツと窓を叩く音がした。そこに立っていた男性は、テッド・ワイズマンと名乗った。
聞き覚えのある名だ。兄の瞑想の導師だった。
テッドを車に招き入れ、超越瞑想とはどんなものですか、と聞いてみた。彼はその場で私に入門講議を授け、思いちがいや思い込みを正してくれた。
お酒もたばこもやめる必要はない。静けさと強さに満ちた場所から力を得て、自信をもって仕事にあたれるようになる。
そして当時の私がとくに惹かれたことに、テニスでも集中力を高め、もっと強くなれるというのだ。
テニス大会の決勝戦を控えていた私は、瞑想すれば勝てるでしょうかと思わず聞いた。
すると「勝てるかどうかは保証できませんが、負けてもあまり嫌な気持ちにならなくなりますよ!」という答えが返ってきた。
1日「15~30分」の瞑想で人生が大きく変わる
次の週末にさっそく手法を学び、それから1日2回、15分から30分ずつ瞑想するようになった。
かれこれ30年以上も前のことだが、瞑想はいまも私の人生を支える柱となり、とほうもない恵みを与えてくれている。
その影響を肌で感じてきた私にとって、瞑想が心身に与える効果が次々と明らかになっていることは、意外でも何でもない。
アメリカではいまも瞑想はひどく誤解されている。
日常的に瞑想する人の数が大幅に増え、超越瞑想を習得した人は全米に600万人いるともいわれるのに、たいていの人は瞑想と聞くとエセ宗教的な慣行を連想し、その効果を認めもせず、理解もせずにいる。
この信じがたいほど変化の早い時代、さまざまな刺激が感覚に集中砲火を浴びせ、私たちの注目と関心を得ようとする世界にあっても、瞑想さえすればそうしたすべてから逃れ、真の孤独と平穏の場所に、しかもまったくお金をかけずに行くことができる――そういわれても、瞑想を学んだ人でなければ、にわかには信じがたいだろう。
瞑想を簡潔かつ正確に説明する一文を最近読んだので、紹介しよう。
「瞑想がめざすのは、思考を支配することではなく、思考に支配されないようにすることである」
これまでに指摘されてきた瞑想の効果は、ほとんど奇跡のようにも思える。
医療の必要性が全般的に減り、冠動脈イベントの発症がほぼ半減し、高齢者のQOL(クオリティオブライフ。生活の質)が高まり、寿命が延び、不安やうつが減り、知性と創造性が促され、ぐっすり眠れ、しあわせな気持ちになり、禁煙の役にまで立つというのだから。
たしかに、かつては信頼性に欠ける研究も多かった。それにこんなに簡単に誰にでもできることなのに心身の健康を大いに増進できるだなんて、できすぎた話に思えるかもしれない。
しかし、そんな懐疑主義も徐々に消え去ろうとしている。瞑想が心身の働きに影響をおよぼすことに関してもはや疑いの余地はない。
瞑想が多くの疾患や症状を改善し、命を救う場合さえあることまで、科学的に証明されつつある。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の精神科医レベッカ・グラディング博士は、心理学分野の専門誌『サイコロジー・トゥデイ』に2013年に書いている。
「瞑想のよさを絶賛する声を、あなたもきっと聞いたことがあるでしょう。生活のあらゆる場面に役立つなどという話を、眉唾だと思う人もいるでしょう。でも実際そうなのです。1日15分から30分間瞑想することで、人生への向き合い方や、ものごとのとらえ方、人とのつきあい方が劇的に変わるのです。共感力が高まり、ものごと(や自分自身)がはっきり見え、名状しがたい静謐と平穏を感じることができるでしょう。瞑想に代わるものはありません」
(本原稿は書籍『ハーバード医学教授が教える健康の正解』からの抜粋です。続きは本書でお楽しみください)
↑ 終了 ↑
いかがでしょうか?
冥想のやり方はいろいろありますので、いろいろ試しながら、あなたやお子様に合った方法を是非とも見つけてください。
サンジブ・チョプラ(Sanjiv Chopra)
ハーバードメディカルスクール(ハーバード大学医学部)教授。医師。米国内科学会最高栄誉会員(MACP)。ベス・イスラエル・ディーコネス医療センター(ハーバードメディカルスクール附属病院)肝臓科上級医長。毎年150か国8万人の医師を教える、世界で最も学術的に優れた医師生涯教育プログラムである、ハーバードメディカルスクール生涯教育部門の部長を12年間務める。医療現場での臨床判断のツールとして世界60万人以上の医師によって利用されているインターネット上の電子教科書「UpToDate」の肝臓病セクションの編集責任者も務める。ハーバードメディカルスクール優秀教育者賞、ロバート・S・ストーン賞(ベス・イスラエル・ディーコネス医療センターで医師、スタッフ、学生により選出)、米国消化器病学会優秀教育者賞、エリス島名誉勲章など多数の賞を受賞している。
デビッド・フィッシャー(David Fisher)
著述家。15冊以上のニューヨークタイムズベストセラーの著書を持つ。
櫻井祐子(さくらい・ゆうこ):訳者
翻訳家。京都大学経済学部卒、オックスフォード大学大学院で経営学修士号を取得。訳書に『CRISPR 究極の遺伝子編集技術の発見』『選択の科学』(ともに文藝春秋)、『OPTION B 逆境、レジリエンス、そして喜び』(日本経済新聞出版社)、『イノベーション・オブ・ライフ』(翔泳社)、『第五の権力』『0ベース思考』『SPRINT最速仕事術』(いずれもダイヤモンド社)など。
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